17シーズン第12話 あるドクターの死
風丘先生にスポットが当たっている話の感想を書いていますが、今回の話も感想を書こうかどうしようか迷いました。
前回の9シリーズ第4話と同じで、本当に辛い話だからです。
でも、今回見直してみると、亡くなった男性のことだけでなく、いろいろな要素が詰め込まれていて、とても濃密な内容の回だと思いました。
13シリーズの第7話のラニシン回と通じるものがあります。
あらすじ、撮影裏話
第12話のあらすじ、撮影裏話、出演者の情報をお伝えします!
主なゲスト出演者(敬称略)
相島一之、古村比呂、佐々木勝彦、奥田達士、野仲イサオ、IZUMI
・第12話のあらすじ
洛北医大の風丘のもとを訪れていたマリコに、男性の遺体が発見されたという連絡が入る。男性の名前を聞いて、驚く風丘と助教授の有田(相島一之)。
その男性はかつての二人の同僚の弓原(奥田達士)で、15年前にポストを求めて、他の大学に移っていた。
マリコは遺体の手の甲のかすかな傷が気になっていたが、弓原の死には事件性が認められないということで、司法解剖は認められなかった。
そこで、マリコは、かつての同僚の死の原因を明らかにしたいと意気込む風丘と共に、臨床検査技師である弓原の妻(古村比呂)の了解を得て、解剖を実施する。
土門も弓原の死に疑問を抱いており、事件にはなっていないが、独自に捜査を開始する。
東映のHPに掲載されたあらすじはこちら。
・第12話の撮影裏話はこちら。
感想
第12話の感想です。
一口感想
本当につらい話ですねえ・・・。その人の仕事の能力には関係なく、上司とそりが合わなかったり、アピールができない性格だったりして、認められないことってあると思います。
法医学に誇りを持ちながらも、その世界に居場所を見つけることができなかった弓原先生。生活に追われて、弓原先生を受け入れる余裕がなかった奥さん。
じゃあ、どうすればよかったのでしょうか。答えは簡単には見つかりません。
この話の注目ポイント
今回注目したのは、以下のポイントです!
・濃密な脚本
冒頭でも書きましたが、43分という放送時間の中に、よくこれだけの要素を詰め込んだなというお話でした。
風丘先生のいる法医学の世界の話、亡くなった男性の話、科捜研の労働時間に関する話、使命感の話・・・。しかも、コメディ要素まである。
しかも、どれも無理やりではなく、自然な形で一つの話に収まっています。すごいですね。
ラニシン回は戸田山さん、この回は櫻井さんの脚本。私が批評をするのもおこがましいですが、優秀な脚本家さんですね。
この回はつらい話だからと、1度しか見ていなかったのですが、見直すといろいろな発見がありました。
・風丘先生、マリコさんのことよくわかってるはずなのに
マリコさんが洛北医大に骨格標本を持ってきた冒頭のシーン、面白かったですね。
マリコさんが転んでしまって、標本がマリコさんの上に載っている光景は面白かった!
また、法医学教室のスタッフが、科捜研のマリコさんに仕事を頼んでいたことをたしなめた時に、風丘先生が
「いいんです。私はいつもこの何百万倍も働かさせれてます、この方に」
と答えるところとか。
でも、先生、マリコさんとの付き合いも長いのに、マリコさんには無理なことを求めてしまうことがありますね。
マリコさんに、風丘先生が助教授の有田さんに感じている微妙な遠慮をわかってもらおうとするのは無理です(笑)。
「9割方意味不明でしたが、なんとなく雰囲気だけはわかりました」
って言われちゃいますよ。その後、何の遠慮もなく、蒲原刑事を連れて、有田さんに直接話を聞きに行ってるし(笑)。
18シリーズの第8話でも、息子の大樹君の結婚問題について、マリコさんに話を聞いてもらおうとしたし。
でも、その話では、マリコさんもある程度の理解は示してくれてましたけどね。
・風丘教授
風丘先生が洛北医大の法医学の部屋でスタッフの人とやりとりしている姿、新鮮でした。風丘先生が「教授」と呼ばれているところも、初めて見ました。
先生、ちゃんと出世もされている!この回でしか見られない光景です。
・久しぶりに壁になる藤倉刑事部長
藤倉刑事部長は、最近は土門さんやマリコさんにもずいぶん理解を示していて、敵対関係という感じではなくなりました。
でも、この回は久しぶりに、二人を止める壁としての役割を果たしていましたね。
結果的には、藤倉刑事部長の言っていた「事件性がない」ということが当たっていましたし。
藤倉刑事部長は柔軟な姿勢も見せるようになったとは言っても、基本的なところは変わっていないということなのでしょうね。
・「迷惑だと思ったことはありません」
最初は事件性が認められなかった弓原さんの件については司法解剖が認められず、奥さんの了解を得て、解剖が実施されました。
マリコさんはご遺体の手の甲の傷が気になっていて、解剖後に科捜研に戻ってきた時に、いつものように他のメンバーにも鑑定を依頼しようとします。
しかし、日野所長は事件になっていない案件について、他のメンバーを巻き込んで鑑定を進めることを許可しません。
皆の健康も考慮して、いつものように
「帰れる時は早く帰らないと」
とマリコさんをたしなめます。
所長の言っていることは確かに正しいですね。マリコさんの熱意はすばらしいと思いますが、皆にもそれぞれ生活があるし。
徹夜になることもある科捜研の業務ですから、休める時にはちゃんと休んで、健康を維持する必要もあるし。
結局はマリコさんが一人で残り、鑑定を進めることになりました。すると、宇佐見さんが戻ってきて、鑑定を手伝ってくれます。
宇佐見さんの家の状況を気遣うマリコさんに対して、宇佐見さんは
「私は母の介護のために前の仕事をやめ、科捜研に来ました。公務員なら定時で帰れると思って」
と言います。マリコさんはそれに答えて、
「ええ、なのに。私のせいですよね」
と言いますが、宇佐見さんは
「そうですね。でも、それを迷惑だと思ったことはありませんよ」
と答えます。
現在はお母さんの状態も落ち着いていて、専門家の手も借りられているから、問題はない。
そういう状況でなくなったら、迷惑だと思うかもしれないと正直に伝える宇佐見さん。
その後、マリコさんになぜいつもここまでするのかと尋ねた宇佐見さんは、マリコさんが強い使命感に突き動かされていることを知って納得し、鑑定に取り掛かろうとします。
「使命感」というのがこの話の大きなテーマですね。
・大丈夫?日野所長
その後、弓原さんの死に事件性があると判断されて、本格的な捜査が始まりました。
徹夜で鑑定をすることになり、日野所長は疲れで体がふらついていました。心配そうに所長を見つめる宇佐見さん。
このシーンが、このシリーズの第17話で日野所長が倒れたことにつながっていきます。
・では、どうすればよかったのか
法医学の研究者としての誇りを持ちながらも、法医学の世界での居場所を失ってしまった弓原さん。
医者として法医学とは違う分野の仕事もしますが、どれもうまくいきません。
性格的にも、人との付き合いが得意ではなく、器用に世渡りできるタイプではなさそうです。
結果的には、洛北医大で講師を続けていたほうがよかったのかもしれませんが、やめてしまったからには、弓原さんはどうすればよかったのでしょうか。
簡単に答えがでない難しい話だなと思います。
・「使命感は人を殺すことがあるのかもしれない」
土門さんが最後のシーンで言っていたように、今回の話は真実がわかっても、誰も救われません。
でも、弓原さんがどのような思いを抱いて亡くなったのかを周囲の人が知ることには、やっぱり意味があるのではないかと私は思います。
実際には事件ではなかった弓原さんの死の真実を明らかにしたことについて、マリコさんは土門さんに、
「真実を明らかにしたことには意味があったんだ」
と言ってほしかったのかもしれません。
でも、土門さんはマリコさんを甘やかしませんね。落合刑事のことも例に出して、
「もしかしたら、使命感ってやつは、時に人を殺すことがあるのかもしれんな」
と言って去っていきます。
「どんな理由があれ、俺は自殺を認めない。自殺は被害者になると同時に加害者になるってことだ」
とも言っていますしね。土門さんの厳しい面が伺える言葉です。